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【FHQ】勇者の物語

第6章 勇者の剣


こんな派手な出発をした理由はちゃんとある。

勇者の剣に吸い寄せられて、魔物が王都に大量発生したからだ。





『勇者ある所に魔物あり』





大昔の誰かが、そう言ったそうだ。











「イワイズミさん、アレ、何ですか?」
「どれだ?」
「あの、羽生えた巨大なトカゲみたいな生き物です」
「…………こっちに飛んできてる奴か」
「そうです」
「アレはワイバーンだ。逃げるぞ」
「え」

王城を出てすぐ。ふと上を見上げたら、早速魔物が王都に来ていた。

「イ、イケジリさん!?」
「ヒナタくん、アオネくん!イワイズミくんも」

貴族の住宅街に行くと、荷物を積んでいたイケジリさんと出くわした。

「今出るのか」
「そうだよ」
「外れまで乗せてくれ。ワイバーンが来てる」
「ワイバーン!?」

イワイズミさんの言葉にイケジリさんは心底驚いて、俺達の背後の空を見たまま言った。

「……わかった。乗って」
「恩にきる」
「ありがとうございます!」

俺達が乗り込むと、イケジリさんの荷馬車は走り出した。
走り出したと同時に、

ガァアアアアアアアアアア!!!

ワイバーンが雄叫びを上げて、荷馬車に向かって高度を下げてきた。

荷馬車は城下町に入る。
イケジリさんは馬を叩いて速度を上げた。荷馬車が大きく揺れる。
昼間の城下町を駆け抜けながら、俺は荷馬車の幌の上に立ってワイバーンを振り返る。

「ヒナタ!降りろ!危ねぇぞ!」
「ここで仕留めないと、街の人が危ない!」

ワイバーンはもうすぐそこまで来て、屋根の上の風見鶏が壊された。
剣を抜いて、ワイバーンに向けて構える。

突然、ワイバーンは高度を上げて、荷馬車の前に回り込んできた。

「うわあああああああ!!!」
「イケジリ!!気にせず走れ!!」
「無理無理無理無理!!」

手綱を引こうとするイケジリさんを、イワイズミさんは荷台に引き摺り込み、手綱を代わって馬を叩いた。
馬は高く嘶いて、蹴る力を強めた。

「ヒナタ!羽を狙え!薄いとこ!」
「はい!!」

イワイズミさんが走らせる荷馬車は貧民街に入った。
道幅が広がって、建物が低くなる。




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