第6章 勇者の剣
「いまだ!!」
「だああああああああああ!!!」
イワイズミさんの合図で、俺は助走をつけて高く跳躍する。
荷馬車の惰性で一気にワイバーンに近付いて、噛みつかれるのをギリギリで回避する。目の前に被さってきた羽を剣で裂き、その穴を通って、荷馬車の幌の上で受け身を取る。
この一瞬の出来事でワイバーンはバランスを崩して、貧民街に滑り込んで、建物を粉砕した。
「おいおいマジかよ!!そんなんアリかよ!!」
「アリです!!」
幌の中からのイケジリさんの声に返事をしながら、俺は荷台に戻る。
荷馬車は王都を出て、林の中を疾走する。
「イワイズミくん!もうすぐ川に出るから、そこで分かれよう」
「おう」
川辺で荷馬車が急停車して、俺とアオネさんは荷台から転がり降りる。
手綱をイケジリさんに戻して、川を渡ろうとしたけど、
「あ!歩けねぇ!」
「ヒナタ掴まれ!」
イワイズミさんは俺を担いで渡る。アオネさんも後に続く。
川を渡り切ると、ワイバーンが飛んでくるのが見えた。
イケジリさんが叫んだ。
「魔王倒す前に死ぬんじゃねぇぞ!!」
イワイズミさんが叫び返す。
「お互いになああ!!」
イケジリさんと荷馬車が林の中に入って行くのを見届けて、俺達は逆の林へ入って行く。
ワイバーンは俺達のいる林の頭上を旋回していた。
しばらくして、ワイバーンは去って行った。
「俺達を、見失った?」
俺が呟くと、イワイズミさんは首を横に振った。
「違うな。魔族は基本、林や森に無理矢理侵入しない。誰かの縄張りだったりするからな。多分だが、追うのを諦めた、と言った方がいいかもしれん」
「なるほど」
「とりあえず、今夜野宿出来そうな場所を探すぞ。疲れて歩きたくねぇし、ズボンと靴がぐしょぐしょだ」
アオネさんは頷いた。
俺達の次の目的地は
伊達街だ。