第6章 勇者の剣
朝。
思ってたよりも寝れた。
だって、あんな柔らかいベッド初めて!何なのあれ!何で出来てんの!?綿だよ!!
スッキリした朝を堪能していると、胃がきゅうっと言った。
俺とアオネさんは身支度を済ませて(鎧は着てない)、イワイズミさんを待っていると、部屋をノックされた。
返事をすると、イワイズミさんが扉を開けた。
黒いハイネックと紺のジーンズパンツを着て、黒い編み上げブーツを履いていた。昨日は鎧を着てたけど、今日は体のラインがくっきり出てて、鍛え抜かれた体がはっきりしてる。
「おはよう、ヒナタ、アオネ。よく寝れたか?」
「おはようございます!バッチリです!」
俺は親指を立てて見せた。
「アオネはどうだ?」
アオネさんは頷いた。
イワイズミさんは「そうかそうか」と言って満足そうに笑った。イワイズミさんの笑顔は朝が似合う。
「朝食が出来てる。食いに行こうぜ」
「ハイ!」
イワイズミさんに付いて、部屋を出た。
王宮の朝食ってどんな感じなんだろう?やっぱり、めっちゃ豪華なのかな?蟹とか海老とかあるのかな?
俺は期待し過ぎてた。
「ほら、食え」
「…………これ、何ですか?」
「知らねぇの?キッシュだ」
キッシュ?なんか、ケーキみたいな見た目……。
「パイ生地とかタルト生地に、卵と生クリーム、それから挽肉とかほうれん草とか入れてオーブンで焼くんだ」
すると、俺とアオネさんの向かい側に座るイワイズミさんは、俺達に小さく手招きして声を潜めて教えてくれた。
「実はこれ、昨晩の宴の余りだ。仲間がくすねて来たのを分けてもらったんだ。有り難く食えよ」
イワイズミさんは悪戯に成功した少年のように笑った。
俺とアオネさんは「いただきます」と言ってキッシュを頬張る。
「うまいか?」
「美味しいです!」
「そうかそうか。全部食っていいぞ」
「え、イワイズミさんは食べないんですか?」
イワイズミさんの前には、浅い皿に入ったシチューと茶色がかかったパンが置かれていた。
「俺はこれで十分だ」
騎士の食べる量にしては少ないと思った。