第6章 勇者の剣
謁見の間。
吹き抜けの高い天井を見上げて、固まった。何メートルあるんだろう?
「ヒナタくん」
「ひゃっ!」
イケジリさんに背中を押してもらわなかったら、首が後ろに折れてた。
赤い広い広いカーペットを進んで、真ん中辺りで止まる。
20メートルくらい遠い場所に、ちょっと階段になったなんか豪華な椅子に座って、赤いマントを着たおじいさんが座ってた。
両脇には、屈強な騎士が目を光らせてる。
イケジリさんが片膝を付いて、胸に片手を当ててお辞儀した。
俺とアオネさんも見よう見まねでお辞儀する。
「面を上げよ」
謁見の間に王様の声が木霊する。
俺は恐る恐る顔を上げた。
王様は、多分口元に手を当ててる。……表情がわからない。動きが見えにくい。
「ヒナタ ショウヨウと申したか」
「ハ、ハイ!」
驚いて立ち上がってしまった。自分の失態に気付いて、そっと正座する。
すると、王様は上品に笑った。
「そんなに緊張せんでも良い」
「ハイ、スミマセン」
うぅ……肩身が狭いよぉ……。
「其方らに試してほしい事があって、ここに通した」
王様の声がまた木霊する。
「魔王討伐に行くとは誠か」
「はい」
俺は頷いた。アオネさんも頷いた。イケジリさんは動かなかった。
「では、付いて来い」
王様は椅子から立ち上がった。
俺たちの周りに、使用人ぽい人が来て「こちらです」と言って、王様と一緒に謁見の間を出た。
王城の広い中庭の大岩のてっぺんに刺さった金色の剣を、王様が指して、
「抜いてみよ」
と命令された。
なんか、何だろう。この「ノー」と言えない空気は……。
(理由聞くのも億劫だし、さっき無礼な事しちゃったし……さっさとやろう)
俺はかけられたロープの梯子を上って、岩に立つ。
「これを抜くんですか?」
「如何にも」
王様とアオネさんとイケジリさんと、数人の騎士と使用人に見られながら、剣の柄を握って引き上げると、
シュコンッ
俺が今使ってる剣を鞘から抜くよりも軽く抜けた。
「抜けましたー!」
剣を掲げて見せると——、
歓声が上がった。