第6章 勇者の剣
荷馬車は門を潜った。潜ってもまだ街があった。
「ここは王族が住む住宅街だよ。城下町よりも警備員が多いんだ。ちなみに、さっきの街は貴族の住宅街ね」
イケジリさんは説明しながら馬を歩かせる。
「あの、イケジリさん。さっきの身分証って何?」
「ああこれ?これ付けると、王様に謁見申し込むのに必要な書類とか、書く必要なくなるんだ。職業に合わせて発行されて、学生は学校で貰えるよ」
「ガッコウ?」
俺が聞き返すと、馬が止まった。
イケジリさんが俺を振り返る。
「学校知らない?」
「知らないです。初めて聞きました」
「アオネくんは知ってる?」
アオネさんは頷いた。
「行ってた?」
アオネさんは首を横に振った。
イケジリさんは唖然としたが、すぐに荷馬車を動かす。
「そうか、そうなのか……」
「何か、まずいでしょうか?」
「いや、いいんだ。そういう境遇の子もいるし。別に不思議じゃない。ごめん、驚かせて」
「い、いえ……」
沈黙したまま荷馬車は移動して、王城に入る。
「ここからは歩こう」
荷馬車を降りて、イケジリさんは近くの木に馬を繋げる。
詰め所でイケジリさんは番人と話して、俺たちを案内してくれる人を呼んでもらった。
その人について行くと、中庭を通って、大きな柱が並ぶ廊下を通って、1つの部屋へ通された。
壁には暖炉と豪華なタペストリーとステンドグラスの窓、テーブルと椅子があるだけの部屋で、書類と筆ペンを渡された。
ここでイケジリさんに教えてもらいながら、自分の履歴書(?)みたいなのを書かされた。学歴の欄は空白で良いって言ってくれた。
全て書き終わって、紙を取りに来た人に渡すと、少し待つように言われた。
……1時間くらい待たされた。
身分証カードを受け取ったら、受け渡しに来た人が
「王が謁見を希望しております」
と言われた。
イケジリさんを見ると、「行った方が身のため」と囁かれた。