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【FHQ】勇者の物語

第6章 勇者の剣


絢爛豪華な夕方の住宅街を進んで、イケジリさんは1つの屋敷の前で、荷馬車を止めた。

「悪い。ちょっと待っててくれ。できれば、こっちの空箱に入って」

イケジリさんは荷台の隅の空の木箱を指した。
俺とアオネさんの2人分はある。

「終わったら声かけるから、それまで静かにしていてくれ」
「わかりました」

イケジリさんは申し訳なさそうに、箱の蓋を閉じた。

木の隙間から外を見ると、同じ様にアオネさんも箱に入って、イケジリさんに蓋を閉められていた。

イケジリさんはゴソゴソと他の木箱を下ろして、地面に並べていく。

そして、鉄格子の門を開けて屋敷の庭に入り、大きな両開きの扉をノックする。
出迎えたのは初老の男性。清潔そうな黒い服をピシッと着て、イケジリさんと何か話してる。

話し終えると、庭を出て、並べた木箱を2人で手分けして中へ運び込んでいく。

全て運び込んで、また庭で2人が立ち話を始めた。
すると、初老の男性が俺とアオネさんの入った木箱を指して、何か言ってる。嫌な汗が背中を流れた。

イケジリさんは身振り手振りで何かを訴えてる。男性は明らかに訝しんでいたが、片手を振って屋敷に戻って行った。

イケジリさんは酷く疲れきった様子で、荷馬車を走らせた。

しばらく進んで木の陰に止めると、俺とアオネさんの箱を開けてくれた。

「ごめんな。こっちにも事情があって」
「いえ、いいんです。さっきの人は?」
「ああ、あの人はあの家の執事さん。疑り深い人でね、ちょっと俺は苦手」

イケジリさんはチロっと舌を出した。

日は大分傾き始めている。

イケジリさんはまた荷馬車を走らせて、街の中心部、つまり王城へ向かった。
今度は箱に入らなくてもいいらしい。

固く閉じる城門の門番2人に荷馬車を止められた。

「身分証を提示しろ」
「どうぞ」

イケジリさんは首に掛けていたカードを、服の下から出して見せる。

「そちらは?」

門番が俺とアオネさんを見た。
イケジリさんは笑顔で紹介する。

「冒険者のヒナタくんとアオネくんです。冒険者の身分証を発行してあげてください」
「なるほど、そういう事でしたか。ではお通りください」

なんか、思ってたのと違う!
もっと厳重なチェックとか入る覚悟はしてたけど、これは拍子抜けだ!




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