第6章 勇者の剣
王都。
「到着だ」
「ウッヒョーー!!」
街を囲う城壁を抜けて、城下町に入る。
石畳で出来た道や建物。おじいちゃんが座るベンチも石だ。
街灯は金属で出来たオシャレなガス灯。
家は軒を連ねて、家と家の隙間はなく、ただ高い。
「あれは前に図鑑で見た!蒸気で動く車!そんであれは自転車ってやつ!」
「お、正解」
カーブや小さな坂が多い小道を脇目に、賑わう大通りを荷馬車は進む。
「すっげぇ!スッゲェ!」
「ははは、興奮し過ぎ。ここはまだ城下町だよ?城に近づくにつれて、建物は大きくなるし、ほら、人の服装も変わってくるよ」
「服装?」
ふと目があった女の子の服を見ると、麻でできた薄いワンピースに裸足……
「…………」
「……気づいた?これが王都の真実」
俺はその子から目が離せなかった。
「ここは貧民街と近いから、たまにああいう子も見かける。城下町の本当の住民はあっち」
イケジリさんが指した方を見ると、烏野村のみんなが来ていた服よりも、ちょっとオシャレな服を着た人達が、カフェテラスで談笑している。
アオネさんは黙って街を見回していた。
イケジリさんがそれに気付いて、
「アオネくんは伊達街出身だったね。どう?似てる?」
アオネさんは俯いた。きっと困ってる。
だから俺が代わりに答えた。
「よくわからないって」
「あはは、そっかそっか。小さい時の記憶だもんね」
イケジリさんは優しく笑った。
荷馬車は進んで、広い石橋の下を通る。
抜けると、そこは世界が違った。
「な、な、な」
「な?」
「なんじゃこりゃーーーー!!??」
「あっははははは!!」
大きな屋敷がブロックに沿って並んでいた。鉄格子だったり木だったりする柵に囲まれた庭を持つ屋敷が、いっぱいある。
城下町では全然見れなかった、木・花・草といった、緑を節々で見かける。
人の服装も全然違う。
男の人は四角い帽子とか丸い帽子を被って、動きにくそうな黒いピシッとした服を着て、足が悪いわけでもないのに杖を突いてて。
女の人は裾をずるほど長いワンピースを着て、なんかでかい帽子被ってて、レースがついたクラゲみたいな傘さして。
「王都には、世界が2つあるんですか?」
「あはは、全部同じ世界!ヒナタくん面白いね」
俺は空いた口が塞がらなかった。
アオネさんはずっと俯いていた。