第6章 勇者の剣
「コインの事だよ。これ結構良い値が付くのもあって、冒険者にとっては貴重なお給料だよ?それを知らなかったなんて」
「へぇー」
イケジリさんは困ったように頭を掻いた。
「取り敢えず、コイン手分けして集めよう」
「はい!」
3人で拾い集めて、イケジリさんは自分が拾った分も俺たちにくれた。
「良いんですか?」
「うん。俺は仕事の給料で全然食っていけるから。それに君達は運がいいよ。俺以外の人と会ってたら、コインの事は教えてくれないし、総取りされてたかもね」
「えぇ!?」
「それくらい厳しい世界に入ったと思いな」
「肝に銘じておきます!」
イケジリさんはふっと笑った。
「君達はどこに向かってるの?」
「王都です!」
「俺と同じか。俺も王都に荷物を運んでる途中なんだ。よかったら乗ってく?」
「いいの!?」
「ゴブリンのお礼だよ」
イケジリさんはアオネさんに「ね?」と笑いかけた。
アオネさんは頷いた。
「じゃあお願いシアース!」
お言葉に甘えて、俺とアオネさんは荷台に乗り込み、イケジリさんは馬を走らせた。
「ところで、君達はどこから来たの?」
「烏野村です!」
「か、烏野!?」
イケジリさんは驚いて振り返った。
「サワムラには会った?!」
「はい!良くしてもらいましたよ!」
イケジリさんは前を向いて俯いた。「よかった、よかった」と何度も呟いてる。
「お知り合い、なんですか?」
「ああ、ちょっとな。まさかこんな所でアイツの名前を聞けるなんて………」
ちょっと泣いてる?
俺たちは遅れて自己紹介を済ませて、王都に向けて他愛のない会話を楽しみながら進む。
イケジリさんと会って1日と半日後、つまり夕方ごろに王都に着いた。
予定より早い到着だ。