第6章 勇者の剣
あの小人型で小さな棍棒を振り回す集団は……
「ゴブリン!?」
ズル賢いけどそんなに頭が良くない弱小モンスター。
俺は剣を抜いて、取り敢えず近くでこっちに背を向けてるゴブリンを切る。
豆腐みたいにスパンッと切れた。
赤紫色の粒子を舞わせて消えると、他のゴブリンが俺を一斉に見た。黒い眼球に紅一点の瞳が俺を見る。
「うひぃ!」
思わず身がすくんだ。すると、俺の後ろからアオネさんが飛び出てきて、襲いかかってきた1匹のゴブリンを、ひと殴りで消滅させた。
「やああああああ!!!」
木刀以外の剣は初めて振り回すけど、思いのほかイケる!
見つけたゴブリンを手当たり次第に倒していって、全部倒し終えたら荷馬車の周りにコインが散乱していた。
俺とアオネさんの財布のものではなさそう。
荷馬車には馬が1頭繋がれていて、ゴブリンの襲撃に驚かずに大人しく出発を待っている。
俺は荷台を覗くと、誰か居た。積まれた木箱の隙間で縮こまってる人がいる。
「お兄さん大丈夫?ゴブリンならもう居ないよ?」
俺が声をかけると「え、子供?」と呟きながら、お兄さんは顔を出した。
「君達が、倒したの?」
「うん!」
俺が答えると、お兄さんはパッと笑って荷台から出てきた。
「俺、イケジリっていって、この荷馬車で配達やってるんだ。ゴブリン倒してくれてありがとう!」
「たまたま通りかかっただけなんで、気にしないでください」
イケジリさんは荷馬車の周りに散らばるコインを見て、苦笑いを浮かべた。
「もしかして、冒険初心者だったりする?」
「正解!何でわかったの?」
「コイン拾ってないからね。魔物を倒すと、こうやって落としていくんだ。これを街で売るとお金になって、いろんな物を買えるよ」
「へぇー!知らなかった!」
イケジリさんの顔が強張った。
「え、マジで言ってる?」
「何のこと?」
俺が首を傾げると、イケジリさんは教えてくれた。