第4章 来客
「カゲヤマアアアアア!!!」
「!?」
俺は木刀を持ってカゲヤマの部屋に飛び込む。
カゲヤマは目を見開いて、長い棒を持ったまま止まった。
「俺は!諦めねぇ!」
「……魔王討伐のことか」
俺の気迫に怯む様子もなく、カゲヤマは作業に戻る。
「お前、何作ってんだ?」
「矢」
カゲヤマは短く答えて、棒の先端に先の尖った石を括り付ける。
……ってそうじゃなくて!
「俺を旅に連れて行け!役に立ってやる!」
「それ以前の問題だ」
カゲヤマは作業の手を止めて、俺を見た。
「お前の魔王討伐の動機は“復讐”だろ」
「お、おう。まあそうだな」
「“復讐”ほど悲しいものはない」
「……どういう意味だ」
自然と木刀の持つ手が強くなる。
「“復讐”はお前自身を蝕む。最初こそ何ともないが、だんだん虚しくなるんだ。もし復讐できたとしても、失ったものは戻らないし、誰にも感謝されない。もしかしたら、沢山の人の恨みを買うかもしれない」
「魔王を倒したら、誰から恨みを買うんだ?」
「俺含めた、魔族だ」
カゲヤマの目が赤くなる。
俺は一歩、身を引いた。
「俺はさっき、魔王を倒す事を目的としているって言ったが、正確には改心させるのが最終的な目的だ。そのためにはまず、あの人を倒さないとならない」
カゲヤマの旅への動機は、変革。
俺の旅への動機は、復讐。
「復讐以外の動機……」
そんなの、今更考えられない。
7歳の時芽生えたこの感情を、ずっと温めて続けて、今ここで変えるなんて、できやしない。
「ところで、1つ思ったんだが」
カゲヤマが作業に戻りながら俺に聞く。
「なんで1人で旅に出ようと思わないんだ」
「なんでって……」
そんなの決まってる。
「俺は、独りじゃないから」
アオネさんやヤチさん、烏野村のみんなが俺を支えてくれてる。
「優しいみんなを置いて1人で出て行くとか、嫌じゃん」
俺が言うと、カゲヤマは溜息を吐いた。
「矛盾してる」
矛盾してる…………そう言われてもしょうがない。
魔王に復讐したい、でも烏野村に居たい。
旅に出たいのに、出たくない。
うん。矛盾してる。でも、
「俺、欲張りだから!」