第4章 来客
「うわははは!」
夜の食堂にスガワラさんの笑い声が響く。
「あー、久々に腹の底から笑ったわー!」
「スガワラさん!笑い事じゃないですって!」
俺はスガワラさんの向かいの席で焼き魚を食べる。
スガワラさんは好物の激辛麻婆豆腐を一口食べて、俺の隣に座るヤツに話しかける。
「カゲヤマ、ていったか?災難だったなー」
「うす」
カゲヤマは愛想のない返事をして、カレーを食べる。
あの事件の後、俺とカゲヤマはシャワーを浴びて、アオネさんがハエを処理してくれた。ヤチさんはしばらく気絶しちゃってた。
ヤチさんは気絶して何もしなかった詫びにと、個人が食べたい料理を振舞ってくれた。
夕食時には、例の如くスガワラさんが食堂に来て、今に至る。
「そういえばカゲヤマ。もう動いて大丈夫なのか?」
「どうしてっすか」
「結構重症だったべ?傷口開かんか?」
スガワラさんにそう言われて、カゲヤマは少し黙って考える素振りを見せ、首を傾げた。
「いや、放っておけば治るし」
「え!すご!」
スガワラさんは素直に驚いた。
ヤチさんとアオネさんも料理を持って、俺たちの近くのテーブルに座ると、食堂に人が来た。
「こんばんはー」
サワムラさんだった。
ヤチさんはすぐに立ち上がり、サワムラさんの元へ行く。
「いらっしゃいませ!食べたいものありますか?」
「うーん、今ある材料で何が作れる?」
「えーっと、焼き魚と激辛麻婆豆腐とカレーですかね」
「レパートリーの幅が広いな。じゃあ焼き魚で」
「かしこまりました!」
ヤチさんが厨房にいなくなると、サワムラさんはカゲヤマを見て叫んだ。
「ヒナタ!アオネ!スガ!今すぐそいつから離れろ!」
懐から小型のナイフを出して、素早くカゲヤマの首筋に当てた。
「だ、ダイチ?」
スガワラさんが心底驚いて、席を立っていた。俺もサワムラさんの声にビビって、アオネさんの背中に逃げていた。アオネさんは平然と座っている。
「お前、魔族だな」
「!?」
食堂に緊張が走る。
カゲヤマはされるがままで、スプーンを離さずに座っている。
「どういうつもりだ」
サワムラさんの低い声で圧がかかった質問に、カゲヤマはしれっと答えた。