第4章 来客
「別に、何もしません」
「それを信じろというのか!」
サワムラさんは奥歯を噛み締める。カゲヤマの首から赤い線が垂れた。
「ダイチ、落ち着け。話そうよ。な?」
「落ち着いてられるか!」
スガワラさんが宥めようとするも、サワムラさんはとうとうカゲヤマの髪を鷲掴みする。
「ぐっ」
カゲヤマは痛みで僅かに唸った。そして、首を捻ってサワムラさんを見上げた。
「思い出しました」
「!?」
サワムラさんがカゲヤマから飛び退く。
カゲヤマの暗い瞳がサワムラさんを見つめる。
「王都の人間ですね」
サワムラさんは、ナイフを右手に持ってカゲヤマに向け、左足を引く。
カゲヤマの口角が少し上がった。
「王宮剣術の構え……やはり貴方でしたか!!」
カゲヤマが椅子から駆け出す。
サワムラさんも駆け出す。
「せいっ」
サワムラさんの一撃はカゲヤマに躱され、懐の侵入を許してしまう。
「××××××××××××××××」
カゲヤマの口が動く。途端にカゲヤマの持つスプーンが赤く光り、
バチンッ
火花が散る。
サワムラさんは左手で顔を覆いながら、距離を取る。
カゲヤマの追撃は止まらず、赤いスプーンとナイフがぶつかって、また火花が散る。
サワムラさんの咄嗟のナイフでの防御、そして反撃。カゲヤマのスプーンを落とした。
スプーンは元の色を取り戻す。
カゲヤマはスプーンが無くなった右手をそのまま握って、サワムラさんの顔面を殴った。
サワムラさんは足を一歩引いて転倒を防ぎ、右手のナイフを逆手に持ち替えてカゲヤマを切りつける。
カゲヤマの頬に赤い線が生まれるが、すぐに消えた。
サワムラさんはカゲヤマに突進し、押し倒す。
サワムラさんの方が明らかに体重が重いので、カゲヤマはどう足掻いても抜け出せない。
サワムラさんはカゲヤマに馬乗りになって、カゲヤマの左眼球にナイフを突き立てた。
「ぎゃあああああああああああ!!!!」
カゲヤマの悲鳴が食堂に響き渡る。厨房で物が倒れる音がした。
カゲヤマの赤黒い血が池を作り始める。
サワムラさんはナイフを刺したまま、カゲヤマから退く。返り血のついた両手越しにカゲヤマを見た。