第1章 悲しい過去
「ただいまー!」
「おかえり!にいちゃん、アオネくん来てるよ!」
「ぅえ!」
ナツに引っ張られて家に入る。手を洗って、木刀をリビングの隅に立てかける。
「アオネさん!ちわっす!」
アオネさんはこくんと頷いた。相変わらず無口だけど、無愛想な雰囲気は無くて嫌いじゃない。むしろ一緒にいると落ち着く。
「アオネさんは昼飯食べた?」
アオネさんは頷いた。
「ナツは?」
「ナツもたべた!たべてないのにいちゃんだけ!」
なんか負けた気分……!
俺は母さんに用意してもらった五目ご飯をかき込んで、むせた。
アオネさんは俺に水を差し出して、背中をさすってくれる。アオネさんはやっぱり優しい!無口で大きいな体の所為で勘違いされやすいけど、アオネさんはすごくいい人なんだよ!俺は声を大にして言いたい!
「アオネくん、いつもありがとう。それにカラクリも。ナツが喜ぶわ」
母さんがお茶を注ぎながらアオネさんに礼を言う。アオネさんはまた頷くだけだったが、口元が緩んでる。
アオネさんが作ったカラクリはナツの大好きなおもちゃだ。
アオネさんの住む街は、ここからちょっと遠い。林を抜けて川沿いに下ると伊達街と呼ばれる、大きな街がある。そこにアオネさんは住んでる。サンギョーカクメーって言うのが何年か前に起こって、工業が発展して色んな機械やカラクリを作って売ってる。
アオネさんは師匠の移動販売の手伝いで、各地を歩き回ってる。
だから俺より2歳しか違わないのに、色んな事をしてて器用!正直羨ましい。