第1章 悲しい過去
「にいちゃんはごちそうさまですか?」
「ちーがーうー!まだ食べる!ナツはあっち行ってろ!」
「ぷー!」
ナツは俺の食べる手が止まると、奪おうと聞いてくる。聞いてくるだけマシになったけど、あの食い意地は誰に似たんだ?俺か。
そうだ。俺、アオネさんに聞いておかなくちゃ。
「アオネさん!今日は泊まってくの?」
アオネさんは頷いた。
「じゃあ、師匠も?」
アオネさんは首を横に振った。
「違うの?アオネさん残して帰っちゃうの?」
アオネさんは微妙な表情になった。
「あ!わかった!師匠は一旦別の村に行って、その後にアオネさんを迎えに来るんだ!」
アオネさんは頷いた。
俺達の会話はいつもこんな調子で、なかなか話が進まない事もある。でも楽しい。だってなぞなぞみたいでしょ?
その後はナツがカラクリで遊んで、壊して泣いて、アオネさんが何度も直してくれる。
これはいつもの風景。これがアオネさんがいる時の日常。
終わらないと思っていた。俺達が子供でいる限り、この日常は終わらないと思っていた。
なのに、なのに…………