第3章 魔物の脅威
信じたくない。でも、受け入れなきゃいけない。
どんなに辛くて苦しくてもーーー。
俺は逃げ出したい気持ちを堪えてアズマネさんを見る。今にも泣き出しそうな顔だろう。
「現像が終わったら、見せてください」
「うん、わかった」
下を向けば落ちてしまいそうで、上を向いても溢れてしまいそうで。
「ニシノヤはな、」
アズマネさんが突然話し始めた。
「千鳥山町の出身なんだ」
聞いたことのない地名だ。
「あそこの町も数年前に魔物に襲われて、大穴が空いた。烏野村の少し離れた川辺で倒れているところを、タナカとエンノシタに助けられたんだ」
寝ているニシノヤさんを見る。大口を開けてヨダレを垂らしてイビキをかいて寝ている彼からは想像もつかない。
「発見当時はひどい外傷で、化膿も始まっていた。発見がもう少し遅かったら、歩けなくなっていただろうな。それに、変な痣があるんだ」
そこまで言ってアズマネさんはハッとして「この話はまた後で」と言って、無理矢理話を終わらせた。
「ヒナタ、ゆっくりでいいから飯は食べてくれよ?みんな心配しているから。お前は独りじゃない」
アズマネさんの言葉は不思議と、ストンって音を立てて俺の心に落ちた。
しばらくしてタナカさんが目を覚ますと、怒られた。
「やっちゃんがこの世の終わりみたいな顔で、泣きながらお前を抱えてるから、みんな生きた心地がしなかったぞ!!」
その後「でも」と言ってこう続けた。
「それがウソかホントか、夢か現か、自分でも分からないくらい混乱して動揺したんだろ?あの旅人にはキツく言っておいたからとりあえず安心しろ」
タナカさんに続いて目を覚ましたお兄さん達は、俺に色んな言葉をくれた。