第3章 魔物の脅威
気がついたらベッドの上で、掛け布団が何か色んな物に押さえつけられていた。
首を振って右を見ると、アオネさんが腕を枕にして寝ていた。
首を振って左を見ると、ヤチさんが瞼を真っ赤にして、タオルを持って寝ていた。
首だけを起こすと、サワムラさん、スガワラさん、タナカさん、ニシノヤさん、エンノシタさん、ナリタさん、キノシタさんーーー
それぞれがそれぞれの寝方で寝ていた。
…………何があった?
ふと窓の方を見ると、朝日は既に昇って部屋を明るく照らしていた。
「あ、おはようヒナタ。気分はどう?」
アズマネさんが部屋のドアをそっと開けて入ってきた。
手にしたお盆にはコップが1つと握り飯が3つ乗っている。
「えっと、悪くないです」
「はは、そうかそうか。起きれるか?」
「……はい」
アオネさんとヤチさんを起こさないようにゆっくり体を起こす。
「起きたばっかりだけど、食べれる?」
「全然食べれます!」
「しー……みんな起きちゃうよ」
「あ、そっすね……」
アズマネさんから盆を受け取って、コップのお茶を飲む。ヤチさんが淹れてくれるものよりちょっと薄味だ。
握り飯を食べると、中は鮭が入っていた。
「アズマネさん、俺、何があったんですか?気がついたらベッドの上で。旅人から雪ヶ丘村のーーー」
言いながら思い出した。
雪ヶ丘村に大穴が空いたって……
「ウソ、ですよね?」
アズマネさんは答えない。
「あの旅人が言っていた事は、ウソですよね?」
アズマネさんは苦しそうに顔を歪める。
「残念ながら、真実だ」
息が詰まりそうだ。アズマネさんが作ってくれた握り飯が喉を通らない。
「ヒナタが倒れてすぐ、タキノウエさんとーーーほら、カメラ屋の。一緒に見に行ってみたんだ。雪ヶ丘村を。写真も撮ってきて今は現像中だ」
倒置法で話すのは、内心焦っているから。
「見るのは辛いかもしれない。でも、知っておかなければならないんだ。これからの為にも」