第2章 第2の故郷
俺は何も言えなかった。
黙って俯いていると、突然テーブルが誰かによって強く叩かれた。
「俺は信じない!キヨコさんが魔女だなんて信じない!」
タナカさんの仕業だった。
ニシノヤさんもタナカさんと同じようにテーブルを叩いた。
「みんながおかしいんだ!あんなにも優しくて強くて美しいキヨコさんが、悪い魔女な訳がない!そうだろリュウ!」
「その通りだノヤっさん!」
「お前らうるさい!」
騒ぐタナカさんとニシノヤさんにスガワラさんは怒鳴って、2人は口を噤んだ。
「シミズは俺たちが生まれる前からこの村にいる!なのに当時と変わらない姿はおかしいと思わないのか!」
「スガ、お前も落ち着け」
サワムラさんの静かな物言いに、スガワラさんも黙る。
「ここで論争したって、今は変わらない。誰かが悪いから起こった事でもない。偶然が重なって起こったんだって、俺は信じたい」
食堂がまた静まり返る。
だから、より響いた。
「皆さん!大変お待たせ致しました!」
ヤチさんの明るい声が。お通夜のように静かな食堂に。場違いに。
皆は驚いて、思わずヤチさんを凝視した。
次に起こった事は一瞬だった。
「わわわわ私とした事が空気も読まずに料理を運んで来てしまい申し訳ありません穴に埋まってお詫び申し上げます!!!」
「早まるな!埋まるな!」
「料理持ったまま土下座はダメ!」
「やっちゃんは何も悪くない!」
「すまん!俺たちが悪かった!」
俺とアオネさんは顔を見合わせた。