第2章 第2の故郷
「ここを使ってください!」
「ウヒョー!こんな広い部屋初めて見た!」
シングルベッドが壁に2つ並んで、正方形のテーブルと、大きな背もたれの付いた椅子が2つ。木窓には優しいレースのカーテンが付いていて、庭の木の木漏れ日が差し込む。ミックスウッドのチェストも2つある。
「洗面台とトイレは一緒になってます。お風呂はこっちです」
「ここ、ホントに俺たちが使って良いの?」
「はい!こちらの事情で2人部屋で申し訳ないです」
「良いよ全然!ね、アオネさん!」
ヤチさんは申し訳なさそうに頭を垂れる。
こんな広い部屋を使わせてもらえるのに文句なんて出ない!アオネさんも喜んでるし。
「着替えはチェストのものを使っても大丈夫です。タオルも入っているはずです」
ヤチさんはチェストを少し開けて教えてくれた。良い子だな。
「じゃあご飯できたら呼びますね。それまでゆっくりしていてください」
「うん!ありがとう!」
ヤチさんが居なくなると部屋に少し影が落ちる、ように見えた。何でだろう?
「アオネさん、先お風呂入る?」
アオネさんは首を横に振った。
「じゃあ俺先に入るね!」
アオネさんは頷いた。
チェストから清潔そうなシャツとズボン、それからタオルを出して脱衣所に入る。
そういえば、イズミンがくれたこのTシャツ、意外と汚れてる。あとでヤチさんに洗えるか聞いてみよう。
俺とアオネさんは風呂を上がって、テーブルに向かい合った。
「これからどうする?」
アオネさんは眉間に皺を寄せた。その顔怖い。
「ずっとここに居てもヤチさんに迷惑かけちゃうし、だからと言っても行く宛もないよね」
アオネさんは小さく頷いた。
すると、俺に一つ案が浮かんだ。
「あ!アオネさんの故郷ってここから近い?」
アオネさんはまた眉間に皺を寄せた。
「もしかして、行き方分からない?」
アオネさんは頷いた。
「烏野村、来たことないの?」
アオネさんは頷いた。
つんだ。
俺もアオネさんもまだ子供で、やたらと動き回るのも危険って母さんと父さんに言われた事がある。
…………。