第2章 第2の故郷
役場から歩いて10分。
村の宿に到着した。
「こんちゃー!やっちゃんいる?」
スガワラさんはノックもせずに木の扉を開けて中へ入って行く。俺とアオネさんも後を追う。
温かい雰囲気のログハウスで、床には四角がいくつも組み合わさったような模様の大きな丸いカーペット。
フローリングはミックスウッドで、ソファやテーブルは手作り感満載だ。
木のカウンターから、小柄な女の子が顔を出して笑った。
「スガワラさん!ようこそいらっしゃいませ!話は聞いております!」
昼間なのに星が見える。
「やっちゃん、紹介するよ。小さいのがヒナタで大きいのがアオネ」
「はい!よろしくお願いシャス!私はヤチ ヒトカでありんす!7歳です!僭越ながら、この宿の主であります!」
え、主?
「ヤチさん俺と同い年!?」
「ひゃ、ひゃい!」
「すごい!宿の経営って子供でも出来るの!?」
「あー、えと、厳密には違うんですが、結果的に……その……」
ヤチさんは口ごもって、カウンターに顔が隠れる。
俺が首を傾げると、スガワラさんはうわははっと笑って頭を撫でてきた。
「やっちゃんはちょっと複雑なんだ。聞いてあげるな」
「よくわからないですけどわかりました」
「わはは、どっちだよ」
俺は頭を撫でられながらヤチさんをちょっと観察してみたけど、怯えたウサギを見ているようで、あまり見ていちゃ悪いなと思った。
カウンターから恐る恐る出てきたヤチさんが、部屋へ案内すると言うので俺とアオネさんは付いて行った。スガワラさんはまだ仕事があるからと言って役場に戻って行った。