第13章 再会
「そういえば……どうしてここにいるんだ?」
イズミンがそう聞いてきた。
俺はどうやって答えようか迷った。魔王と戦うためとは言いにくい。でも嘘はつきたくない。
「色々あって、旅してるんだ。ここには怪我の治療で」
「そっか。大変だね」
「ううん。2人と比べたら全然……。イズミンとコージーはどうしてここに?」
イズミンの表情が険しくなった。
俺は質問を取り消そうとしたが、先に答えられてしまう。
「俺はどうにか逃げ延びて、村の外れでコージーが倒れてるのを見つけたんだ。2人でとりあえず村から離れようと移動していたら、途中で大きな荷物を引く馬車が通ったから助けを求めたんだ。だけどその馬車は奴隷商人のもので、伊達街に連れ込まれてすぐに売られた。商品の中で1番安い値段だったよ。その時にはコージーはもう歩けなくなっていて、コージーが殺される前にどうにかここで身を隠しているんだ。俺だけの稼ぎじゃ医者にもかかれなくて、毎日必死だよ」
イズミンが俯いた。
「もう何年この暮らしをしているのかわからない。コージーの体はどんどん爛れてくし、給料も一向に増えない。貯金しようにも、元々少ない食事をこれ以上減らすわけにもいかないからできなくて……」
イズミンは顔を上げると口の端を上げた。
「だから、ショウちゃんが元気そうで俺嬉しいよ。俺たちと同じになってなくてよかった」
「イズミン……俺……」
イズミンの泥だらけの笑顔はすごく弱っていて、触ったらすぐに崩れそうな土人形のようだった。
俺はハンカチを取り出してイズミンに見せる。
「これ、覚えてる? イズミンが誕生日の時にくれたTシャツだよ。俺の友達がハンカチにしてくれて、旅に出る前に持たせてくれたんだ」
「あの時の……?」
俺が自信を持って頷くと、イズミンは涙をこぼした。
「ショウ……ゲホッ」
「コージー?」
コージーが小さい手で床を叩いた。音がしなかった。
イズミンが座ったまま寄り、俺も後に続く。
「て……」
俺はコージーの爛れた手に自分の手を重ねた。不自然なほどにあったかい。
「これ、呪い……だから……治んない……ゲホッ、っでも……ヤツを、倒せば……解ける……」
コージーの途切れ途切れで小さい声を、聞き逃さないよう耳を傾ける。
「誰を倒すんだ?」
「クロ……オ」