第10章 工業の街
次の日もその次の日も、医者はおろかアオネさんさえも見つからなかった。
だんだん俺の身体に痺れが戻り始めている。
夢蟲と久しぶりに話したけど、だいぶ疲れてるようだった。
「なあ夢蟲。そんな無理しなくても、ケンマが抑えてくれてるから、大丈夫だよ。少し休んだら?」
「お前は本当に底抜けに阿呆だな。あの白魔道士の痺れ取りが本当に効くと思ってんのかよ」
「ええ!?」
「ありゃあただの気休めだ。あのクロオの魔法がチンチクリンなわけねーだろ。ずっと隠そうと思ったが、これは呪いだからな」
呪い。
「ケンマはこれ以上、痺れを取れないの?」
「無理だ。あいつの専門はどうやら毒だからな」
夢蟲はそう言ったきり、姿を見せなくなった。
「ケンマの専門は、毒、だって?」
「っ!……どこでそれを?」
「夢蟲が言ってた」
俺は気になって、思わず本人に確かめた。
伊達街に来て5日が経過した。俺はベッドから出れなくなっている。
「そうだよ」
ケンマは気まずそうに俯いた。
「専門じゃないのに、ありがとな!」
「俺、隠してたんだよ?」
「うん!面倒みてくれてた事には変わりないし、これが呪いっていうのにも気付いてたんだよね?」
「……それは、知らない」
え?
ポカンと俺が呆けていると、ケンマはブツブツと独り言を始めた。
「……そっか、だから効かなかったんだ……それでアレが……なるほど」
「えっと、ケンマさん?」
「調べ物が出来た。図書館行ってくる」
「えー!あー!いってらっしゃい!」
俺が引き止める間も無くケンマは部屋を出て行った。
6日目。
今日は朝からひとりぼっち。
イワイズミさんとカゲヤマは例の如く、人探し。
ケンマは図書館。
帰ってくるのは、3人揃って夜。
7日目の夕方も、全身の痺れに弱りながら目を瞑っていると、
「お!ホントにいた!」
聞いたことのない声の男が部屋に入ってきた。
年齢はアオネさんと変わらないくらい。茶髪で高身長。女子にモテそう。
「君が、ヒナタ ショウヨウだな!」
「いきなり入ってきて人を指すな!」
「悪いね!君のお友達から、依頼を承りまして、今から拐かそうと思います!」
悪びれた様子もなく男は俺に近づいて来て、俺を傍に抱えた。
「かどわかすって言った?」
「そう!誘拐だよ!」