第11章 7日間
俺は今、見知らぬ男の脇腹に抱えられて、建物の屋根伝いに街を移動している。
煙を吸わないようにマスクを付けてくれたが、未だ目的は言わない。
男はフタクチと名乗った。
「ねえ、俺の友達からの依頼ってどう言う意味ですか?」
俺がフタクチさんに尋ねると、さっきまでの陽気さを失った声が返ってきた。
「そのまんま。この街に来て、行方不明になった友達がいるだろ」
きっと、アオネさんだ。
「俺さ、そいつと古い友人でさ。長い間ご無沙汰だったのに、ほんの1週間くらい前にふらりと帰ってきたかと思えば、開口一番『助けてくれ』って」
何も変わってなくて安心した、とフタクチさんはマスクの下で笑った気がする。
俺は不思議と、この人から逃げようとは思わなかった。
アオネさんの知り合いって、言葉にしてないけど、アオネさんが信用する人なんだって、なぜか確信を持てた。
「しかしまあ、この剣重いな」
フタクチさんは急に愚痴をこぼした。
フタクチさんはアオネさんに言われたとおり、俺だけでなく剣も持ってきていた。勇者の剣はフタクチさんの背中に、布に包まれて背負われている。
「この剣、昔勇者が使っていたらしく、魔物を引き寄せるらしいです」
「は!?魔物!?それ早く言えよ!」
フタクチさんは驚いて、移動速度を速めた。