第26章 翡翠の誘惑
「もちろん! 狭い家だけど、家族にマヤのことを紹介したいもん。ついでにオルオの家も見学してさ、うじゃうじゃいる兄弟の顔を拝んだら? オリーにも紹介するよ!」
「オリーって前に言ってたオルオの妹さんだよね?」
「そうそう、オルオの妹にしては可愛い子だから、マヤもすぐに仲良くなれると思う」
「うわぁ、楽しみ! ありがとう!」
以前ペトラに髪を結ってもらったときに、オルオの妹のオリーは本当の姉妹のようだと聞いていたマヤは、心底うらやましく思っていたから、今回のペトラの誘いが嬉しくてたまらなかった。
「ねぇ、ペトラ。私の家も全然広くないけど、泊まりに来てくれる?」
ペトラの家に泊まりたいし、自分の家にも招待したい。
「行く行く! やった~!」
大喜びしているペトラを見て、誘って良かったと思う。
「じゃあうまく調整日を合わせて…、最初は私んち、その次はマヤんちでお泊まり会ね!」
ペトラがマヤの方へ横向きになって、バチッと片目を閉じた。
「マヤんとこは紅茶屋さんだもんね~! あ~、楽しみだ!」
「私もペトラのおうちに行けるの楽しみ!」
二人はひとしきり “楽しみだね” “すぐにでも実行したいね、休み取れるかな?” などと話していたが、だんだんとまぶたが重くなってきた。
それは当然である。
今日は朝早くから起床して始発の船に乗り初めての王都に乗りこんだかと思ったら、これまた初めての貴族の屋敷で舞踏会。そしてカインの暴行事件、グロブナー伯爵のミスリル銀贋物容疑の連行、事情聴取…。
あまりにも多くの… 刺激的な出来事が起こりすぎた。
「お布団に入ろうか… ペトラ…」
「ん…、そうだね…」
二人で仲良く大きなエクストラキングサイズの掛け布団をかぶろうとしたが…。
「あっ、ランプ…」
煌々と部屋を照らしている明るいランプ。
マヤはそっとベッドからおりて、ランプの明かりをゆるめた。
仄暗い灯りが部屋を包む。やや赤みを帯びた、やわらかい光。
ますます眠気を誘発するような、あたたかい色。