第26章 翡翠の誘惑
「あれが結構不思議だったから、馬車の中で団長に訊いてみたんだ。そうしたらさ、同じ貴族でも階級があって、その序列は絶対的なものなんだって」
ペトラの階級やら序列という言葉を受けて、マヤも天井を見上げながら。
「あぁ…、レイさんはバルネフェルト公爵、アトラスさんはロンダルギア侯爵のご子息だよね。グロブナー伯爵は伯爵…。貴族でも “なんとか爵“ が色々あるもんね」
「そうそう、それのこと!」
大の字のペトラが嬉しそうに広げた両腕をばたばたさせる。ちなみにマヤは、普通の仰向けで寝ている。
「レイさんとこの公爵が一番上なんだって。その次にアトラスさんの侯爵、そしてグロブナー伯爵の伯爵なんだって」
「へぇ…」
「だから伯爵より絶対的に上の階級であるレイさんとアトラスさんは、グロブナー伯爵が年長者であってもおかまいなく接して全然OKなんだって!」
「そうなんだ」
マヤはペトラの説明で納得した。だが少し疑問に思ったことを口に出す。
「でも、それって貴族の間でのしきたりというか慣習みたいなものでしょう? エルヴィン団長やリヴァイ兵長にもちょっと乱暴な感じじゃない?」
「まぁね。それはあれじゃない? レイさんたちがタメ口きくくらいに、団長たちと仲がいいか、もう生まれたときからえらそうにしゃべるのが癖になってるから、誰にでもそういう風に言ってしまうとか…」
「ふふ、もうペトラは!」
マヤはペトラの言い方が面白くて笑ってしまう。
「何を笑ってんの」
「だって “生まれたときからえらそうにしゃべる” だなんて。なんか笑える…!」
「あはは! ほら、板についてたじゃん? 年上でも関係なくえらそうにしゃべるのが。上級貴族に生まれたらきっとそうなんだよ」
「そうだね。でも…」
マヤは仰向けの姿勢から、ペトラがいる左の方へ横向きになってから。
「兵長とかハンジさんとかも、貴族じゃないけど年上でも関係なくタメ口だよ?」
「確かにね~。兵長は逆に “ですます” でしゃべってても不気味だけどね。ハンジさんはなんていうか…」
ペトラは少し言葉を選んだ。
「年上年下関係なく、公平な人なんだろうね! そんな感じ」