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【リヴァイ】比翼の鳥 初恋夢物語【進撃の巨人】

第25章 王都の舞踏会


「実はさ~、去年の暮れくらいから親父がある噂をちょくちょく耳にするようになってね」

アトラスはにこやかにグロブナー伯爵に笑みを見せている。

「なんでも… グロブナー伯爵、あんたから買ったミスリル銀の加工品が安すぎるんじゃないかって」

「………!」

何を言われるのかと内心ドキドキしていた伯爵は “なんだ、そんなことか” と安堵する。

「それは… 先ほども言ったが、利益ではなく皆の需要に応じようという私の考えの結果、破格の値でお譲りしているからであって。それが何か問題でも?」

「いやいや、問題なんかないよ? そのものに見合った値段ならね? でもさ~、本当にこの安すぎる値段のものなの、これ?」

また手中の剣を軽々しく、ひょいひょいとお手玉のように投げている。

「……何が言いたいのかな? アトラス君…」

「だってさ、あのミスリル銀だろ? 限られた産地で、それも年間にごくごくわずかしか出ない貴重で希少なミスリル銀だろ? 王族と王族に近い特別な一族、そして爵位の高い貴族のなかでも、一握りの者しか所持していない…」

「そんなことを君に講釈してもらわなくても、よくわかっておる」

伯爵は明らかに気分を害している様子だ。

「だからさ~、変だと思わないか? そんな超激レアなミスリル銀なのに、加工品が多すぎる。伯爵が大安売りで貴族に売りまくるものだから、右を向けばミスリル銀所持の貴族、左を向いてもミスリル銀所持の貴族… な~んてことになっちゃってさ。本来ミスリル銀なんてものは話に聞くだけで実物を拝むことすら滅多にないしろものなんだよ!」

にこやかだったアトラスの笑みは、いつの間にやら厳しく糾弾する顔に変わっていた。

「……何を言い出すのかと思えば…」

伯爵は、やれやれといった態度を見せた。

「周知のとおり我が領地から幸運にも発掘されたんだ。どんどん掘って加工して、欲しい人に安く譲って…、それのどこが変なんだね? 言いがかりも甚だしい!」

今まで大人しく父親とアトラスのやり取りを黙って聞いていたカインも叫んだ。

「そうやってみんなケチをつけてくるんだな。僕たちをひがんでるんだよ、パパ!」

可愛い息子を振り返って伯爵は大きくうなずいた。

「あぁ、そうだな。全くひどいもんだ。侯爵の息子が聞いてあきれる」


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