第25章 王都の舞踏会
「オルオ! ここ! 鍵が!」
「よしっ! 俺が!」
一歩後ろに下がってから、思いきり扉を蹴破る。
バァァァァンッ!
頑丈そうな扉も、オルオのキックをまともに受けて吹っ飛んだ。
マヤとオルオが部屋になだれこんだ瞬間に目撃した光景は。
やたら明るい室内。異常な数のランプに照らされた天蓋付きベッド。
カインに組み敷かれて苦しそうにうめいているのは、ペトラだ。
「ペトラァァァァ!」
馬乗りのカインの下でペトラは口に白い布を詰めこまれていた。
「んんんんんんんん!」
オルオの叫びに答えたペトラ。
その瞬間オルオはカインに飛びかかった。
「この変態野郎がぁぁぁぁぁ!」
バキッ!
オルオに力いっぱい殴り倒されたカインは、ベッドから床へ転げ落ちた。
「ペトラ! 大丈夫!?」
マヤはすぐさまベッドに上がって、ペトラの口に押しこめられている白い布を取り出した。
「ハァハァ… ハァハァ… マヤ…」
涙でぐちゃぐちゃになっているペトラの顔。苦しそうな呼吸。
マヤは手錠を外そうとしたが、鍵がない。
「ペトラ、鍵どこかわかる?」
「ハァハァ… ハァハァ…」
荒い呼吸をしながらペトラは、カインがミスリル銀の腕輪だと言いながら手錠を取り出したマホガニーの飾り棚を指さした。
一方、床に転げ落ちたカインは。
大きな派手な音がして振り返ると、扉が蹴破られ、ペトラの同期の二人が乱入してきた。
あっと声を出す前に気づいたら殴りかかられて、ベッドから転落した。
「あいったー! 何するんだ!」
殴られた頬を押さえて叫ぶカインに、オルオは再び飛びかかった。
「うるせぇ!」
ちょうどカインがペトラを組み敷いたのと同じように、仰向けになったカインに馬乗りになったオルオ。
右のこぶしを高々と振り上げ、叫ぶ瞳は怒りに燃えていた。
「ペトラを傷つけるやつは! 絶対に許さなグアッ… ガリッ!」
盛大に噛んだ舌から飛び散る血しぶきが、カインの顔に降りそそぐ。
「ぎゃぁぁぁぁっ! 僕の美貌におっさんの血がぁぁぁぁっ!」