第25章 王都の舞踏会
「あぁぁ、僕のお姫様! 理想の味だよ」
カインは両手でペトラの顔をがっちりと固定すると、じゅるじゅると頬を舐めつづけた。
「んんんんん!」
やっと舐めるのをやめて、じゅるりじゅるりと音をわざと立てながら舌なめずりをして見下ろしている。
次に何をされるのかと底知れぬ恐怖でペトラの顔がひきつる。
「さぁ、ほっぺの味見はしたし? 鎖骨はすべすべだったし? お次はどこかな? うん?」
カインの両手がいやらしい動きをしながら、純白のドレスの胸元にかかる。
「んんんんんんんんん!」
これ以上は耐えられないと再び、動かすことのできる手錠で拘束されている両手と顔を左右に激しく動かして抵抗する。
だが両手はいくら動かしても、手錠が鎖とぶつかってガチャンガチャンと音をさせるだけだった。
同じく顔も、いくら左右に振ったところで涙が飛び散るだけだった。
……お願い! 許して…!
許しを乞い、このひどい仕打ちをやめてもらおうにも、声を出すことさえできない。
絶望に打ちひしがれて抵抗するのをやめ、ただ静かに涙を流し始めたペトラを、馬乗りになったままカインはじっと見下ろしている。
「あはは…! それだよ、その表情が見たかったんだな! 最高だよ、ペトラ。僕の理想のお姫様! さぁもっと恐怖に駆られて泣け!」
「んんんんん!」
「泣かないなら、こうするよ?」
またドレスの胸元を引きちぎろうと手をかけた。
「んんんんんん!」
うめきながら顔を左右に振るたびに、大粒の涙が頬を伝い落ちる。
「あははは~! いいぞ、いいぞ~! もっと、もっとだ! 僕はね、その顔を見たかったんだ。これで描ける、やっと描ける、僕の理想が!!!」
そう叫ぶカインの顔は、得体の知れない狂気に取り憑かれていた。