第25章 王都の舞踏会
「ねぇ、オルオ。さっき団長が言ってた “ペトラが嫌がると決めつけるのは早計だ” とかなんとかってのは、なんの話なの?」
「あぁ… それな…。マヤとペトラが着替えてるときに団長が、王都の舞踏会に出席するのは資金集めのためだって話をしたんだ」
「うん。資金集めだっていうのは聞いたよ?」
「マヤたちに話したときには言ってないことがあってよ、ペトラには伯爵の息子に気のあるふりをしてほしい、そうしたら寄付金が増えるからって…」
「えっ? 団長がそんなことを言ったの?」
マヤは驚いて、目を見開いた。
「いやまぁ、言い方は違うけどさ。でも要約したらそういうこと。それでよ、当然俺は怒った。ペトラにそんなことはさせられねぇからな! そうしたら団長が言ったんだ、“ペトラが嫌がると決めつけるのは早計だろう?” って」
「……そうなんだ。団長が、そんなペトラを利用するようなことを言ったなんてショックだけど…。でもペトラが嫌がらなかったってところは間違ってなかったんだね。さすが団長… ってところなのかな。なんか複雑な気持ちだけど…」
オルオは自分の伝え方のせいで、マヤのエルヴィン団長への尊敬が薄れたらいけないと思い、慌てて言い足した。
「あっ、団長は “ペトラの気持ちは尊重する” “無理強いするつもりはない” とも言ってたからな!」
「確かに私たちに資金集めの話をしたときには、全然ペトラに気のあるふりをしろとか言わなかったし、無理強いとかしてないもんね。自然にそうなったというか、いや違うね…。ペトラは今、気のあるふりをしてるんじゃなくって、気があるんだもんね」
「そうだな…」
しょんぼりと目に見えて肩を落としているオルオ。
「あのね、オルオ。この先どうなっていくかわからないけど、今はペトラの気持ちを優先してあげたいの。さっきね、カインさんに踊り方を教えてもらったってペトラね、ものすごく幸せそうに話してくれてね。ペトラはカインさんがキラキラしてるって言ってたんだけど、私にはペトラが一番キラキラして見えたの」