第25章 王都の舞踏会
「だから、見守ってあげようよ」
まっすぐに見つめてくるマヤの瞳には、ペトラへの優しい想いがあふれているとオルオは思った。
「わかったよ。俺だって、一番望むことはペトラの幸せだからな」
「私も! ……頑張ろうね、オルオ。ペトラのために!」
「おぅ」
結局なんだかんだ言っても、とにかくペトラのことが大好きなマヤとオルオは笑顔を向け合い、ペトラの幸せを第一に力を合わせようと決意を新たにした。
「ペトラ、あの二人のところはもういいのかな?」
自分のところに戻ってきたペトラに、カインは訊く。
「ええ」
「それは良かった。ちょうどいい、紹介するよ。パパとはもう会ってるね?」
「はい」
「では、こちらがアトラス卿。ロンダルギア侯爵の嫡男だよ。アトラス、このお姫様が僕のペトラ、愛しのハニーさ」
グロブナー伯爵の隣に立っている体躯の大きな若い男性に紹介された。
「やぁ、ペトラ。今、伯爵から話を聞いていたところだよ。急に呼ばれたんだってね。遠いところをご苦労さん。俺はアトラス・ロンダルギア、ひとつよろしく」
気さくに話しかけてくれたアトラスに、ペトラは慌ててお辞儀をした。
「調査兵団特別作戦班のペトラ・ラルです。よろしくお願いします」
「特別作戦班? もしかしたらリヴァイ兵士長の?」
「そうです」
「へぇ、可愛い顔して精鋭なんだ」
「いえ、そんなでもありませんです」
変な言葉遣いになったペトラに、アトラスは豪快に笑った。
「あっはっは! 緊張してる? じゃあ俺と踊ってリラックスしようか」
「アトラス! 僕のペトラに、ちょっかいをかけないでくれたまえよ?」
「はいよ」
……ラドクリフ分隊長が若かったら、こんな感じかな?
体が大きくて丸顔で、人の良さそうなアトラスのことを、ペトラは内心でそう思った。