第25章 王都の舞踏会
楽しそうにソファに座りながら、足を投げ出して “こうやってね、カインさんが前に踏み出したら、それに合わせて私が下がって…” と説明してくれているペトラの顔は明るく生き生きしている。
「踊り方を教えてもらった以外は何を話してたの?」
「えっとね、そのずっと…」
またおしぼりを、もみ始めた。
「王都一可愛いとか、君と僕は出逢うために生まれてきたとか…」
「……すごいね…」
カインの言葉が気障すぎて、マヤはどう返事したらいいかわからず、無難に “すごいね” とつぶやく。
「うん。すごくね、すごくキラキラしてるんだ!」
「え?」
「カインさんも、カインさんが私にくれる笑顔や言葉もキラキラしてる。こんなこと初めてだよ? あんな風に可愛いって言ってもらえて、夢みたい…。マヤが言いたいことはわかってるつもり。いきなり現れて可愛いとか連発して踊って…。もっと警戒しなくちゃ駄目だよね? でもね、団長だって言ってたでしょ? 貴族の要求に応えて、舞踏会も楽しめって。今、私… その両方をこなしてるよね? そうでしょ?」
確かにペトラの言うとおりだ。
カインの要求どおりに踊って、なおかつペトラだってその状況を楽しんでいる。
とやかく言われる筋合いはないのかもしれない。
……だけど。
心配なんだもの、ペトラのこと。
ペトラを想うあまり、すぐに返事をせずにいるマヤを見て、ペトラは勘違いをしてしまう。マヤが自分とカインの関係を無条件に否定していると。
だから、カッと頭に血がのぼったのも仕方がないのかもしれない。
「マヤにはわかんないよ! 幼馴染みのマリウスがキラキラで! 私なんかシワシワのオルオだよ!」
「………?」
突然、シワシワのオルオとか叫ぶものだから、マヤは驚いてしまった。