第25章 王都の舞踏会
「そのことなんだけど、ペトラ…」
「ん?」
マヤの心配そうな顔を見て、ペトラはきょとんとしている。
「カインさんのこと、好きなの?」
どういう風に訊こうかと少し迷いもしたが、ここは直球で勝負だと思った。
「ちょっと、いきなりなんなのよ!」
ペトラの頬は赤くなっている。
「ねぇ、大事なことなの。答えて」
「……そんなの急に言われてもわかんないけど…。でも多分、好き… かな」
「じゃあこのまま、おつきあいするとかそういう話になったら承諾するってこと?」
真剣な顔で詰め寄ってくるマヤにたじろぐペトラ。
「どうしたのよ、怖い顔して。そんなの、わかんないわよ」
「だってカインさんにすごく気に入られて、ずっと二人でひっついて踊って…。そういうことじゃないの? というか初対面の人とあんなに密着して大丈夫なの?」
……あぁぁ、そういうことね!
ペトラはぴんと来た。
確かに私も、カインさんに手を取られて訳がわからないままにフロアに出て、抱き合うようにして踊ったときには驚いたけれど。
「あのね、私も最初はびっくりしたけど、舞踏会で踊るっていうのは、ああやって寄り添うのが普通なんだって。私以外の人も見た? みんな密着してたでしょ?」
「まぁ… そう言われたらそうだけど…」
マヤは踊っていた貴族たちの様子を思い返す。
ペトラの言うように、男性が女性の手を取り、肩を抱き、ときには腰に手をまわして、その距離は果てしなく近いものだった。
舞踏会での踊りのマナーなんて知らない。社交界の礼儀もわからない。
もしかしたら密着する前提なのかも。
「マヤ、心配してくれてありがとう。私も不安だったけど、カインさんがすごく優しく色々教えてくれたの。だからダンス、楽しかった。ちょっとだけどステップも簡単なのは覚えたんだよ」