第25章 王都の舞踏会
「……とにかく、ペトラをあの人から引き離さないと…!」
「なぜ」
「それは…」
マヤがうまく言葉を見つけられないでいると。
「いつも冷静できちんとした判断ができる君にしては、めずらしい。感情に流されて、理路整然とした話ができなくなっている」
……どうしよう、うまく言えない。
自分でも、どうしてこんなに焦っているかわからない。
確かにカインさんは別に、ペトラを騙している訳ではないわ。むしろ逆に、ストレートに感情を言葉にして、積極的にアプローチしている。
ペトラも嫌がってないし… というか真っ赤になって嬉しそうにしていたし、これってやっぱりペトラはカインさんのことを好きになったの?
……そんな一瞬で?
カインさんがかっこいいから、ぽーっとなっちゃっただけじゃないのかな?
あれ?
別に一瞬で恋に落ちても、美男子だからぽーっとなっちゃって好きになったって、かまわないよね? ペトラの自由だよね?
なんで私… こんなにも、むきになっているんだろう。
ペトラと話がしたい。
ペトラの気持ちを聞き出して、もし本当に好きになったのだったら、それはそれでいいんだし、応援してあげなくちゃ…。
いや、そうかな? 本当にそうかな?
ペトラの相手が、あの人でいいの?
なんか、違う。
あのカインさんは、どこかおかしいよ。
綺麗なさらさらとしたはちみつ色の肩より長い髪が、シャンデリアの光を受けてはきらきらと光る。
非の打ちどころがない整った顔立ち。宝石のようなアイスブルーの瞳。
出自がそうさせるのか自信のある立ち振る舞いに尊大な言葉。
歯の浮くような気障なセリフ。
「……そうですね。うまく言えないんですが…。でもなんか違うと私の心が叫んでるんです。あの人は… あのカインさんって人は、どこか変です。ハンサムで、見た目に騙されそうになるけど…。どこか信用ならないというか…、えっと…」
……やっぱり上手に言えない…!
マヤが泣きそうになったとき、思いがけない低い声が援護してくれた。
「……要するに、いけ好かねぇ野郎なんだろう?」
「………!」
振り向くと、リヴァイ兵長が立っていた。