第25章 王都の舞踏会
「団長! いいんですか? ペトラ、踊ってますけど!?」
フロアで寄り添っているカインとペトラを、びしっと指さした。
「……何か問題でも?」
「問題大ありです!」
落ち着きはらっているエルヴィンの態度に、普段はどちらかというと物静かなマヤも怒り心頭に発している。それは大切な友達であるペトラを想うあまりに。
「私は自由恋愛に寛大なつもりだ。調査兵団の団長として任務に差し支えのある場合は容認できないが、それ以外は若人の色恋に口を出すような野暮な真似はしたくない。今の状況はペトラの意思で、カイン卿のそばにいると考えるのが妥当だ」
エルヴィンはそこまではマヤの目を見て話していたが、すっとオルオの方を向く。
「言っただろ? ペトラが嫌がると決めつけるのは早計だと」
「……それは!」
こぶしを握るオルオに、マヤがすかさず訊く。
「オルオ、なんの話?」
「……あとで説明すっから」
エルヴィンはフロアで踊る二人に目をやりながら、
「あそこで踊っているかぎりは何も心配は要らないんじゃないか。二人の好きにさせてやればいい」
と言って、去ろうとする。
「ちょっと待ってください!」
「まだ何かあるのか、マヤ?」
「あります! 団長の言うことは間違ってます」
「ほぅ? どこがかな?」
エルヴィンの声色は少々面白がっているような様子だ。
「ペトラの意思でとか、自由恋愛とか…。違うと思います。ペトラは騙されてます。今、ちゃんとした判断ができないでいるんです」
「カイン卿の肩を持つ訳ではないが、別に騙してはいないだろうに。顔が気に入った、理想のお姫様だ、だから呼び寄せた、踊ってほしい。これのどこが騙しているんだね?」