第25章 王都の舞踏会
それからしばらくは、ペトラとマヤが美味しそうに紅茶とスコーンや焼き菓子を楽しんでいる様子を眺めていたエルヴィンだったが、ほぼ食べ終わったところで話を切り出した。
「ペトラ、マヤ。話しておきたいことがある」
「はい、なんでしょう?」
マヤは手にしていたティーカップをテーブルに置いた。
ペトラは口いっぱいに頬張っていたサンドイッチを、慌ててのみこんだ。
「君たちがドレスに着替えているときにオルオには話したんだが…」
オルオの顔に緊張が走る。
そしてそんな視線ひとつでエルヴィン団長を止められることなんかできないのに、精一杯睨みつけた。
「我々が貴族主催の舞踏会や晩餐会、音楽会といった夜会に出席するのには何も遊興にふけるためではない。れっきとした理由があるんだ。わかるかね?」
そう言ってペトラとマヤの顔を順番に見る。
ペトラは首を横に振り、マヤはゆっくりと口をひらいた。
「……ハンジさんから聞いたことがあるんですけど…。団長と兵長は王都で体を張って資金を集めているって」
「ほぅ、ハンジがそう言っていたか」
「はい。こうも言っていました。“私は貴族とは反りが合わなくて到底無理だから王都行きは二人に任せて、違うやり方で貢献するつもりだ“ と」
「……違うやり方とは?」
エルヴィンはマヤに答えを求めるが、ハンジから聞かされておらず答えられなかった。
「わかりません」
「そうか…。まぁ心当たりがないでもないが」
エルヴィンは思案している風だったが、本題に戻る。
「話を戻すが、そのとおりだ。資金を集めるためなんだ」