第25章 王都の舞踏会
「……なんだよ…」
点数稼ぎのために好きでもない甘いケーキを頬張ったのに、喜んでもらえるどころか叱られて、オルオはしょんぼりとうなだれた。
「ははは。なかなか手厳しいね、ペトラは」
「団長! だって伯爵の屋敷で手づかみでケーキを爆食いだなんて馬鹿以外の何ものでもないですよね?」
「確かに行儀は悪いな」
「ほら~! あっ、団長。ちょっと訊きたいんですけど、舞踏会では食事は出るんですか?」
ペトラの質問にマヤは心の中で “私もそれ、気になってた” と思った。
「舞踏会でも色々あって、別に晩餐会をひらく場合もあるが、今日はそうではなく軽食とドリンクがフロアに運ばれる形式だと思うが」
「そうなんですね。……オルオ! 恥ずかしいから舞踏会では、お行儀よく食べてよね!」
先ほどからペトラにぼろくそに言われて、オルオも段々と腹が立ってきた。
「けっ! 行儀よくなんかクソくらえだ!」
そして一番自分の味方についてくれそうな人物に同意を求めた。
「……兵長もそう思いますよね? 男にお行儀よく食えとか勘違いも甚だしいっていうか」
今まで一切口を挟まずに、一連のやり取りを聞いているのかいないのかわからないような様子のリヴァイだったが、冷ややかに即答した。
「……確かに俺も行儀とかマナーとかなってねぇとは思うが…。手づかみでものは食わねぇな」
「兵長~」
オルオは情けない声を出し、
「ほら見なさいよ」
対照的にペトラは勝ち誇った声を出した。
マヤはオルオが少し可哀想になってきて、助け舟を出す。
「ペトラ、オルオがケーキを全部食べたりするからびっくりしちゃって、もうお腹は痛くないんじゃない?」
「ん?」
ペトラはすっかり胃痛のことを忘れていたが、そう言われて手を当ててみる。
「ほんとだ! 治ってる! ありがとう、マヤ!」
「おいおい、そこは俺にありがとうじゃねぇのかよ…」
「なんか言った?」
「いや、なんでもないっす…」
しょぼくれた様子のオルオだったが、ペトラに元気と笑顔が戻って良かったと心から思った。