第25章 王都の舞踏会
………!
すでに一個のケーキを食べてしまっているペトラの顔がひきつる。
「……銀は異常に大量摂取しなければ、むしろ抗菌作用があり毒性は低い」
目に見えてほっとするペトラ。しかし次の瞬間。
「だがミスリル銀は名前に銀とついているが銀ではないからな」
ペトラはがっくりと肩を落とした。
こういうのは気分的なものが大きい。早速、おなかが痛いような感じがしてきて、胃のあたりを手で押さえる。
「……団長、なんかもうおなかが痛いです…」
「大丈夫だろう。即効性がある毒ならもう倒れているだろうし、これくらいの少量なら仮に毒性があったとしても影響は少ないだろうな。あったとしても腹痛くらいで…」
ますますペトラの顔がひきつっていく。
「はは、冗談だよ。気のせいだろうから、ほら紅茶でも飲んで」
ペトラの気を紛らわそうと紅茶をすすめる。
素直に紅茶をひとくちふたくち飲むと、少し落ち着く。
香り高い紅茶には、たかぶった神経を鎮める効果があるからだろうか。
「ペトラ、大丈夫よ。私も食べるから安心して?」
マヤはそう言うが早いか、ケーキをぱくっと食べた。
「あぁ!」
驚いているペトラに、にっこりと笑う。
「ごめんね。私が食べても大丈夫?なんて言ったから不安にさせちゃって…。団長も大丈夫だって言ってるんだし、私も食べたし、大丈夫!」
「マヤ~!」
感激の声を出すペトラを見て、慌ててオルオが叫んだ。
「ペトラ! 俺も食うぞ! 腹を下すときは俺も一緒だ~!」
残っていたすべてのケーキを手づかみで平らげて、ペトラに喜んでもらえるかと期待をこめて振り向けば。
「馬鹿じゃないの!? こんな高そうなケーキ、そんないっぺんに全部のみこんで! もったいないでしょ! 勝手におなかでもなんでも壊したらいいのよ!」