第25章 王都の舞踏会
「「アラザン?」」
綺麗にペトラとマヤの反応は一致する。
「アラザンは砂糖とでんぷんを混ぜた粒に、食用に加工した銀粉をまぶして作ったものなんだが…、さすがにミスリル銀の食用は聞いたことがないな」
「へぇ…、食用の銀なんてあるんですね!」
ペトラが感心したように言いながら、フォークでアラザンをまぶしてあるケーキを突き刺した。
「美味しい!」
小さなケーキは一瞬で食べられてしまった。
「マヤも食べなよ」
「うん。いただきます」
手を合わせてから、マヤもアラザンでキラキラしている小さな正方形のケーキを小皿に取った。
口に入れる前に小皿を目の高さに持ち上げて、じっとケーキを観察する。
「……これ、ミスリル銀…?」
「やだ、団長の言うこと聞いてなかったの? ミスリル銀の食用はないんだって」
「……聞いてたけど…。でもすごい反射してる…」
マヤは小皿をテーブルに置くと、エルヴィンの方を向いた。
「ミスリル銀は鏡のように光を反射するんですよね?」
「あぁ、そうだ」
「ミスリル銀は見たことがないですけど、普通の銀は見たことがあります。こんなに光らないですよね」
真剣なマヤの口調にエルヴィンも応じる。
「見せてくれ」
マヤから小皿を受け取ったエルヴィンは、しげしげと顔を近づけてケーキにふんだんにまぶしてあるアラザンを見つめる。
「……確かにこの輝きは、ミスリル銀かもしれない…。リヴァイ、どう思う?」
リヴァイにも小皿をまわす。
眉間に皺を寄せながら注意深くケーキを観察したリヴァイも同意した。
「恐らくそうなんじゃねぇか」
小皿はオルオとペトラにもまわされ、二人も覗きこんだが、ミスリル銀を知らないのでなんとも言えず、首をかしげるばかり。
一周まわって返ってきた小皿のケーキをじっと見て、マヤはつぶやく。
「……食べても大丈夫なんですよね?」