第25章 王都の舞踏会
メイド長のサリーから伝達がいったに違いない。
すぐに執事がペトラとマヤの分の紅茶を持ってきた。
「……よくお似合いでございます」
先ほどと違って場の空気がやわらかくなっていることを感じ取った執事は、優雅な手つきで紅茶を用意しながらペトラに笑いかけた。
「ありがとうございます…」
頬を染めて礼を述べるペトラを心配そうに見ているオルオ。
「……舞踏会は大広間でおこなわれます。時間まで、こちらでおくつろぎください」
音もなく扉が閉まり執事が出ていくと、ペトラは早速嬉しそうに叫んだ。
「マヤ、見て! さすが伯爵家だよね。豪華~!」
ペトラがはしゃぐのも当然だ。
男三人のときには紅茶と小さなスコーンしか用意されなかったテーブルはいまや、豪華絢爛なアフタヌーンティーセットで華やいでいる。三段のティースタンドには宝石のようなケーキや焼き菓子に一口サイズのサンドイッチ、そしてもちろん紅茶には欠かせないスコーンもならんでいて眺めるだけでも楽しい。
「美味しそうだね。ケーキも銀の粒が散りばめられていて、宝石みたいで綺麗…!」
マヤがケーキの飾りである銀の小さな粒に目を輝かす。
「本当だね! こんなの見たことない。さすが王都! さすが貴族!」
銀の粒が散りばめられてキラキラしているケーキをじっと見ていたペトラは、急にあることを思いついた。
「これ、もしかして… さっき団長が言っていたミスリル銀の粒なのかな!?」
「そんなまさか! すごく貴重なんでしょう? というかミスリル銀って食べられるの?」
「だよね~、さすがにないか」
ペトラとマヤの会話に、すっとエルヴィンが口を挟んだ。
「それはアラザンじゃないかな。今、王都の菓子職人が好んで使っている」