第25章 王都の舞踏会
一旦は納得したオルオであったが、駒扱いの問題は納得してもペトラをぞんざいに扱っている問題は到底納得できない。
「駒かどうかはもういいけど、ペトラの嫌がることをさせるのは納得いかないっす!」
「おい…」
しつこく食い下がるオルオにリヴァイが少々苛立った様子で何かを言いかけたが、それは中断された。
控えの間の扉がひらいたのだ。
メイド長のサリーが出てきて頭を下げた。
「お待たせいたしました。お着替えが完了しました。さぁ、ペトラ様、マヤ様、どうぞこちらへ」
うながされて控えの間からしずしずと、二人は出てきた。
「ほぅ… なかなか似合っているよ、二人とも」
すぐにエルヴィンが褒めた。
ペトラは真っ白な穢れのない美しさを体現したドレス。身体のラインに沿ったデザインを選びはしたが、16歳にふさわしい適度なラインで性的にいやらしい感じは全くない。フレッシュな印象のドレスだ。スカート丈が膝上であることも若さを強調している。
「……ま、馬子にも衣裳ってやつだな!」
ドレス姿のペトラを見た瞬間から、ぽーっと見惚れていたオルオだったが、はっと我に返って憎まれ口を叩いた。
「なんですって!」
「なんだよ、綺麗なドレスでも中身はペトラのまんまじゃん」
早速いがみ合う二人を、マヤがなだめる。
「もう、二人とも仲良くしないで」
そのなだめ方にエルヴィンが笑った。
「はは、“仲良くしないで” か。言い得て妙じゃないか」
「ふふ」
嬉しそうに笑うマヤから、リヴァイは目を離せないでいる。
控えの間から出てきたその瞬間から、真っ白のペトラより淡いピンク色のマヤしか目に入らなかった。
胸元は露出が控えめなデザインであるのに、マヤの豊満なバストでふくらんでいる。ウェストがきゅっと細くて、ますます胸元のふくらみが強調されているように思えて、目のやり場に困った。
そんなつもりはなくても、自分が胸ばかりを見ている気分になったのだ。
意識して胸元から目を逸らしスカートを見れば、ふんわりと広がった昔ながらの王道のデザインで、その愛らしいシルエットはさながらお姫様のようだ。
リヴァイはエルヴィンのように褒めることも、オルオのように声をかけることもできなくて。
ただただ食い入るように、マヤだけを見ていた。