第11章 紅茶の時間
「ふふ、そうだってね。分隊長から聞いた」
マヤは自分が淹れた紅茶を飲みながら目を細めていた兵長の顔を思い出し、嬉しい気持ちが胸にあふれた。
「でね、今日初めて兵長と少ししゃべった」
「何をしゃべったの?」
ペトラが興味津々な様子で訊いてくる。
「紅茶のことでしょ… あとね、オリオンとヘングストさんのこととか」
「へぇ… 紅茶はわかるけど… なんでオリオンとヘングストさん?」
「あのね、昨日のお昼に…」
マヤは厩舎での出来事をペトラに聞かせた。
話を聞き終えたペトラの目が、真ん丸に見開かれる。
「オリオンを厩舎から出したのマヤなの!?」
「うん」
「嘘でしょう!」
「そんなこと、嘘言ってどうするのよ…」
「そりゃそうだけどさ… 信じられない」
「じゃあ今度、一緒に行こ?」
「オリオン怖いからなぁ… 考えとく」
ペトラは組んでいた足を組み替えた。
「それで初めて兵長としゃべってみて、どうだった?」
「うーん… そうねぇ… 嬉しかったかな…」
答えるうちにマヤは、顔が熱くなるのを感じた。
「マヤ、顔が赤くなってる!」
ペトラに指摘されて、マヤは慌てた。
「あっ 変な意味じゃないよ! 今までのイメージが悪かったから、ちょっと話せて楽しかっただけ!」
「わかるわかる、それが兵長にはまる最初のポイントのギャップなのよ!」
ペトラは力説のあまり鼻をふくらませている。
「マヤもやっと、兵長の魅力に気がついたか…。これからは一緒に兵長のファンしようね!」
「いや ちょっと待って! そんなんじゃないから」
勝手に兵長ファンにされて、マヤは手を振りながら否定した。
「いいじゃん、別に」
「よくない!」
「マヤって真面目すぎて面白くないよね」
マヤは軽く頬をふくらませた。
「面白くなくていいもん」
「ねぇ… 恋心っていうか、なんかドキドキするとかないの?」
マヤは少し考えていたが、にっこりと笑った。
「あるよ!」
「何なに?」
マヤは、机の上に置いてある本を指さした。