第25章 王都の舞踏会
「マヤ、エルヴィンが呼んでいる。至急だ」
「了解です」
さっと敬礼をしてマヤは、足早にミケの方へ向かう。
リヴァイもきびすを返しかけたが、動きが止まる。
「ギータ」
「はい!」
名を呼ばれ、ギータの背すじが伸びる。
「倒した相手にいつまでも覆いかぶさってんじゃねぇよ」
「すみません!」
……殺される…!
リヴァイ兵長の低い声はいつものように、なんの感情も含まれていないように聞こえたが、ギータには確かに感じられた。底知れぬ殺意のような鋭さを。
これなら大声で怒鳴り散らされる方がまだマシだ。
頭を下げたままの姿勢で動けずにいたギータの耳に、ジョニーのささやきが入ってきた。
「……兵長、もう行ったぜ」
恐る恐る顔を上げれば確かにリヴァイ兵長はもう、ジョニーのささやきは決して聞こえない位置にいた。
「馬鹿だよな、お前。いくらマヤさんがやわらかくていい匂いするからって、乗っかりすぎなんだよ!」
ジョニーの言いぐさにギータはカッとなる。
「そんなんじゃねぇわ!」
「……は? 何キレてんの。マヤさんって胸でけぇしな。放したくねぇよな? わかるわかる」
その瞬間、ギータは真っ赤な顔をしてジョニーの胸ぐらを掴んでいた。
「マヤさんを変な目で見るなよ!」
「……別に見てねぇわ! 胸があんのは事実だろ! ってか放せよ!」
二人の小競り合いを見て、ダニエルが慌てて止めに入った。
「おい、やめろよ!」
ギータはジョニーから離れて、背を向けた。
「なんだよ、こいつ。熱くなりやがってさ! 馬鹿じゃねぇの?」
解放されたジョニーはギータの背に向かって暴言を吐いていたが、はっと何かに気づいた。
「ギータ、お前… マヤさんに惚れてんの?」