第25章 王都の舞踏会
その叫びで、はじかれたようにギータはマヤから離れた。
組み敷かれていたマヤも、ギータの巨体から解放されたことで、ばねのように上半身を起こす。
かなり離れたところで訓練をしていたミケとタゾロのそばに、いつの間にやら来ていたリヴァイが立っていた。
「兵長、なんの用だろうな?」
「……さぁ?」
少し離れたところにいるジョニーとダニエルの会話は、よく聞こえる。
「結構、深刻な顔してねぇ?」
「いやいや、兵長は元々あんな顔だろ」
新兵に言われ放題のリヴァイは、ミケに何かを伝えにきたらしく、もう立ち去ろうとしていた。
そもそも訓練時間中に兵長または分隊長が他の分隊の班のところへ行くことは非常にめずらしい。
何か緊急の事態でも起こったのだろうかと、マヤは不安になった。
その気持ちを抱えたまま遠くからリヴァイ兵長を見つめているマヤに今さらながら気づいた様子でリヴァイは、マヤの隣にのそっと立っているギータを射抜くように見つめている。
「……やばくね? 兵長あれ、ギータを睨んでるよな?」
「マヤさんと組んでるからじゃねぇか?」
ジョニーとダニエルがささやき合っている。
マヤがそっとギータの顔をうかがえば、リヴァイの視線に絡め取られて蛇に睨まれた蛙さながらだ。
「……おい! 兵長こっち来るぞ!」
ジョニーが実況中継している。
「やべぇ、俺… マヤさんとペアじゃなくて助かった」
ダニエルがそうささやいている間に、リヴァイはマヤとギータのところまでやってきた。