第25章 王都の舞踏会
「……私はギータに比べたら小さいけど、でもだからって全力を出さない訓練なんかお互いに意味がないのよ」
「はい」
じりじりと互いに間合いを詰めながら。
「まさか私が小さいから… 同情したなんてことはないよね?」
「違います! マヤさん… 組み敷いたら壊しちまいそうで…。だからオレ…」
「わかったわ」
短くひとことで返したマヤは、ギータの隙を探っている。
体格で劣っているマヤには隙をつくか、スピードで勝負するか…。真っ向からぶつかっても勝ち目はない。
……今だわ!
なかなか好機がなかったが、わずかに見えた道すじ。一瞬の隙をついてギータの背後にまわり足をかけて倒そうとしたそのとき、何がどうなったか。
………!
どうっと押し倒され、気づけば自身の背は地面に、両腕は完全に押しつけられ自由が利かない。
ギータのそばかすが目と鼻の先にある。
「……お見事。完敗だわ」
敗北を喫したが、ここは努めて先輩らしい態度を取らなければ。
マヤはそう思い、組み敷かれた姿勢ながらも強気の態度を取った。
「……ギータ?」
マヤの敗北宣言を聞いても動かないギータに不信感が募る。
「私の負けよ。……どいて?」
「……になら…」
目を閉じているギータが、何かをささやいている。
「……え? 何?」
「兵長に… なら…、オレ…」
苦しそうに閉じていた目を開けてギータは、マヤを見下ろした。
「マヤさん、兵長とうまくいったら… いいっすね」
まっすぐな視線が落ちてくる。
マヤはギータがなぜ、苦しそうな表情でそんなことを言うのかわからなかったが、返事をしなければならない。
「……うん」
「オレ、マヤさんと兵長のこと応援…」
ギータの言葉はジョニーの叫びでさえぎられた。
「リヴァイ兵長だ!」