第25章 王都の舞踏会
「あぁ、俺とギータは走ってきたから」
「……あっ、そうなんですか」
……そういえば以前に、タゾロさんの朝の自主練のランニングにギータが興味を持っていたっけ。
「ギータ、あれからタゾロさんと走ってるんだ?」
マヤが来たときに “おはようございます” と挨拶をしたきり黙っていたギータだったが、ひとことで返事をする。
「はい」
「そう、すごいね! 朝早いのに。頑張ってるんだね」
微笑むマヤを前にして、ギータはそばかすだらけの頬を赤らめた。
「おいおいマヤ。もともとは俺がすごいんだからな!」
「わかってますよ」
マヤがタゾロにも微笑んだところへ、ミケがやってきた。
「おはよう」
雑談をして和やかだった空気が、一瞬で変わる。
「「「分隊長、おはようございます!」」」
ぐるりと班員全員を見渡すと、ミケは指示を出す。
「今日の対人格闘のペアはタゾロは俺と。マヤはギータと。ジョニーはダニエルと組め。準備運動は各自念入りに。始め」
「「「はっ!」」」
適度な間隔でそれぞれのペアが、訓練場に散らばる。
ペアになったギータと並んで準備運動の屈伸をしていたマヤは、先輩として声をかけた。
「……どう? いける?」
「はい、オッケーっす」
最後の仕上げにぐりんぐりんと手首をまわしていたギータが、にっと笑った。
二人は正面に向き合って、構える。
小柄なマヤの対人格闘の訓練相手としては、大きすぎるギータの巨体。
「ギータ、手加減はなしよ」
対人格闘のペアはランダムでその都度組むのだが、以前にペアになったとき。
隙をついてギータを投げ飛ばしたマヤだったが、すぐにわかったのだ。ギータが手を抜いたことを。