第25章 王都の舞踏会
翌日の午前の訓練は、対人格闘だ。
マヤはいつもより少し早めに訓練場に到着するように、食堂をあとにした。
同じ班のタゾロ先輩。そしてギータ、ジョニー、ダニエルの新兵三人組の合わせて四人全員に、昨日のリヴァイ兵長とのデートを知られている。
到着が遅れて、皆が揃っているところに一人で入っていくのは気恥ずかしい。
自分が先にいて、余裕を持って皆の到着を受け入れたい。
そう考えていたのに。
「マヤ! おはよう!」
タゾロの快活な声を筆頭に。
「「「おはようございます、マヤさん!」」」
新兵三人組も元気よくマヤを迎え入れた。
「……おはようございます」
……なんでみんな、こんな早いの!
内心でそう思っていると案の定、昨日の話題だ。
「マヤ、聞いたぞ? 兵長とデートだったんだってな?」
とタゾロがニヤニヤしながら言えば、ジョニーも。
「俺ら全然知らなかったんで、びびりました。な?」
ジョニーに話を振られたダニエルも大いにうなずく。
「マジで驚いたっす。いつの間にって感じっす」
「それな! マヤさん、兵長とはいつから?」
「えっ、あっ、いつからというか…。昨日はヘルネには行ったけど、つきあってるという訳ではないので…」
マヤの言葉を聞いてタゾロが眉を上げる。
「そうなのか? でも、デートなんだろ? オルオが言ってたぞ?」
「いえ、ち…」
“違います” と言いかけたが、ペトラの顔が浮かんだ。
「……そうなんですけど、でも私がそう思ってるだけで兵長は違うかもしれないので…、そこのとこ… あの…」
ごにょごにょと言っているマヤをタゾロは笑い飛ばした。
「ははは! 昼から出かけて晩にメシも食って帰ってきたんだろ? 兵長もデートだと思ってるさ。まぁでも一回デートをしたからといって、即つきあってるという訳ではないわな。そこはちゃんとわかってるから安心しろ」
「はい…」
意外とタゾロの物分かりが良くてマヤはほっと安堵の息をつく。
そしてさりげなく話題を変えた。
「……皆さん、早いですね? 私、いつもより早めに来たつもりだったんだけど」