第24章 恋バナ
「マヤ…」
ペトラの息遣いはもう、落ち着いていた。
「……兵長とマヤのことなのに、なんかわかった風な口をきいてごめん」
「ううん、ありがとう。これから先に何度でも今日を思い出すよ。どきどきしながら兵長とデートしたこと。ペトラが叱ってくれたこと。そして… もし、兵長への想いをめぐって悩むようなことがあっても、もう下を向かない… ように頑張るね」
「そこは “下を向かない” と言いきらなきゃ駄目じゃん」
ペトラが笑っている。
「そうなんだけど…。でも急に性格は変えられないよ…」
八の字に眉を下げているマヤの肩を、ペトラは叩いた。
「わかってるよ! ぐいぐいガンガンいくタイプじゃないもんね、マヤは。でも大丈夫だよ、兵長への強い想いがあれば、きっとうまくいく」
「うん、そうだね」
マヤは微笑んでから謝った。
「ペトラ、私もごめんね」
「ん? 何が?」
「私がこんなだから、イライラしたんじゃない?」
「えっ、あ~…」
ペトラは一瞬戸惑ったが、マヤを見れば悪戯っぽい笑みを浮かべている。
「うん、イライラした。思いっきりイラついた!」
ペトラも、にっと笑う。
「やっぱりね。……ペトラの顔、すごく怖かったもん!」
二人は顔を見合わせて、互いに顔をしわくちゃにして、腹を抱えて笑った。
笑いすぎた目尻には、涙が浮かんでいる。
「……前から思ってたんだけどさ」
ペトラがマヤの目元を指さした。
「マヤって目の下のふくらんでるとこ、大きいよね?」
「えっ? ふくらんでるとこ…?」
突然指をさされて訳がわからなかったが、よく話を聞けばすぐにペトラの言いたい部位がマヤにはわかった。
「あぁ、涙袋のこと?」
「へぇ、涙袋っていうんだ」
「うん。ここのことでしょ?」
マヤは自身の涙袋… 目の下にあるふくらみを人さし指で示した。