第24章 恋バナ
「いつだったか言ったよね? 私とマヤの兵長への想いはそれぞれ違うけど、大切にしていこうって。想ってるだけでいいよね? 想うことしかできないよね? って。でもそれからマヤは少しずつ兵長との距離が縮まって、執務を手伝ったりしているうちにとうとう二人きりで調整日に出かけるまでになって!」
興奮した様子でまくし立てていたペトラは、ここで一旦言葉を切ると自らをなだめるように、すっと息を吸って吐いた。
「……正直に言えば、そりゃうらやましかったよ? マヤがどんどん兵長との時間を重ねてさ。私だって兵長が好きな訳だし。でも何回も言ってるとおりにね、心から応援してる。兵長のこと好きな以上にマヤが好きだから。マヤなら冷めた恋愛観の兵長をきっと変えられると思うから。おじいちゃんの言ってた言葉、憶えてる?」
「もちろん。“魚心あれば水心”」
ペトラの言葉をひとことも聞き逃さないようにしていたマヤは反射的に答えていた。
「そう。“魚心あれば水心”… 水の中で生きている魚に水のことを想う心があるならば、水もまた魚のことを想うもの…。マヤなら兵長をその想いで包みこめると信じたから…」
ペトラの声は消え入りそうになったが、また勢いを取り戻す。
「なのに、マヤはいつまでたっても自信がなさそうにしてばかりで! なんでよ? 今、兵長の隣にいるのはマヤでしょ? なのになんで隣にいることを認めないの?」
「……それは…」
マヤは最初は “ごめん” と謝ろうとした。
でもそれは違う。
……今は謝るんじゃなくて、ちゃんと向き合わないと。
「どうしても自信なんか持てないよ…。想ってるだけでいいって思ってたのに、その想いのまま、気づいたら今… ここにいるのよ?」
マヤなりに言葉を選んだつもりだったが。
「何よそれ! 気づいたらここにいる? 執務を手伝うようになったのも、食堂に行くようになったのも、今日のデートだって、全部マヤと兵長が選んで自分たちでやってきたんじゃない。そうでしょ?」