第24章 恋バナ
「あっ! え~、実はね…」
一瞬しまったという顔をしたペトラだったが、嘘はつけないと正直に話した。
「隣のテーブルにタゾロさんたちがいたんだよね…」
「“たち” って?」
「マヤのとこの新兵三人組…。ええっとギータ、ジョンとダニエルだっけ?」
「ジョニーよ」
「あぁ、そうだ! ジョニーね」
「そんな… みんなに聞かれたの?」
思いきり自身の所属する第一分隊第一班の面々が勢ぞろいで、マヤは頭を抱えこむ。
「でも、もしかしたら…!」
ある可能性を思いついて、ぱっと顔を輝かせた。
「タゾロさんたちには聞こえてなかったかも? 隣のテーブルにいただけで」
「いやごめん、それはない。マーゴさんが行ったあとすぐにタゾロさんが、“今のマヤのデートの話、マジか?” ってオルオに聞いてきたから」
輝いていた顔が一瞬で曇った。
「そんなぁ…」
「大丈夫だって! タゾロさんも新兵らも驚いてたけど、普通に受け入れてたよ」
「……普通にって?」
「えっと確かね、“マジかよ! 意外とやるな!” とか “全然知らんかった。マヤさん、兵長といつの間に?” とか “マジすげー!” とかそんなだったと思う」
「どうしよう…。明日、顔を合わせづらい…」
「ちょっといい!?」
うじうじと下を向いていたら、ペトラの強い声が飛んできた。
「今日、兵長とヘルネに行ったんだよね!?」
「えっ、うん…」
急に声を荒らげて、わかりきったことを訊いてくるペトラの強い口調に戸惑う。
「それで紅茶屋に行ってお茶して、丘にのぼって景色見て、それからごはんも食べて誕生日も祝ってもらったんだよね!?」
「う、うん…」
「マヤ、兵長のこと本当に好きなの!?」
「………?」
質問の意味が全然理解できなくて、マヤは目をしばたたきながらペトラの顔を見つめることしかできなかった。