第24章 恋バナ
「これでよし!っと」
机の最奥に箱を置いたペトラは、これで安心とばかりに胸を張る。そしてマヤの “嘘でしょう?” に答えた。
「嘘じゃないよ! もちろん夢でも妄想でもないよ。オルオも聞いてたしね」
「うん…。それでペトラはなんて答えたの?」
「安心して! ちゃんと言っといたから。“できてるとかそんなんじゃない、夕方に執務を一緒にすることになったから、そのつづきで晩ごはんも一緒に食べてる” ってね」
「ありがとう」
まともなペトラの返答にほっとしたのも束の間。
「でもそれじゃマーゴさんが引き下がらなくてね…」
「えっ」
「なんかさ、すごい剣幕で “本当のことを言ってくれないと困る” って詰め寄られた」
「どういうこと?」
なぜマーゴがそこまでペトラに詰め寄ったのか、マヤが不思議に思っていると。
「なんでもさ、マヤと兵長が一緒に食堂に現れると、ジムさんが荒れて仕事にならないらしいよ?」
「………」
……少し、そんな気がしてた。
もしかしたら、ジムさんがらみじゃないかって。
「マーゴさんが言うには、もうマヤと兵長が “できちまってる” んだったら、ジムさんも現実を受け入れあきらめるらしいよ? だから正直に言ってあげるのがジムさんのためじゃない?」
「ためも何も、全然 “できちまって” ないもん…」
「そうかもしれないけどさ、一緒に執務してごはん食べてデートして…。実質できてるようなもんじゃない? だから私もよっぽどさ~、“マヤと兵長はできちまいましたから、ジムさんはどうぞ、あきらめてください” って言おうかと思ったんだけどね。まぁ、マヤの許可なく勝手なことできないし…。今度同じこと訊かれたら、言ってもいいかな? いいよね?」
「よくない!」
「え~、なんで?」
「だから、私と兵長はできてなんかないし…」
先ほどから “できてる” とか “できてない” とか、口にするだけでマヤは恥ずかしくなってくる。