第24章 恋バナ
マヤは桔梗のティーカップの箱を大切そうに抱え、ペトラはうさぎの顔のクッションを再び力いっぱい抱きしめる。
「あぁあ~! マヤばっかいい思いしてずるい~! 私もプレゼント、欲しい!」
「………」
ペトラも兵長が好きだと公言している以上、いくら応援してくれているとはいえ、このようなときに、どう反応したら良いのかわからない。
黙ってしまったマヤだが、ふとペトラの抱えているクッションに気がついた。
「そのうさちゃん、オルオからのプレゼントだよね」
前回の壁外調査の前日に、オルオとヘルネに恒例の買い物に出かけたペトラだったが、大きなうさぎの顔のクッションはそのときに、オルオが広場で開催されていたイベントの屋台で見事に入手したものなのだ。
「なんだっけ? 輪投げ? 射的?」
「射的。通りかかったら特等の場所にこのうさちゃんがいてさ、思わず立ち止まったらオルオが “俺がとってやる” ってさ~、かっこつけちゃって馬鹿みたい!」
口をへの字に曲げて嫌そうに語るペトラ。
「でもその子のこと、気に入ってるじゃない?」
「まぁね~、うさちゃんには罪はないし。可愛いしね! ……入手方法は少々難ありだけど、今一番のお気に入りだよ」
ぎゅっとクッションを抱きしめれば、への字に下がっていた口角も幸せそうに上がった。
「オルオで思い出したけど食堂でオルオと晩ごはんを食べてたらさ、マーゴさんにマヤと兵長のことを訊かれた」
「えっ?」
「“最近よく夜に一緒に食堂に来るのは、つまりリヴァイ兵長とマヤはできちまったのかい?” って」
「ええっ! 嘘でしょう?」
思いがけない人からの予想もしていなかった質問を、自分の知らないところでペトラがされていたことに驚き、危うく持っていたティーカップの入った箱を落としそうになる。
「危ない! 箱に入ってるとはいえ、落としちゃ駄目だよ! 貸して」
ペトラはマヤからティーカップの箱を奪い取ると、安全な机の上に置いた。